マネジャーのミカタ

管理職の役割を果たすためにおさえたい5つの機能

管理職の役割
mozawa
  • マネジャー管理職の仕事がうまくいかない
  • なりたてで何をしていいかわからない
  • 何をすべきか教わっていない
  • 候補だと言われているが不安だ

そんな方へ、
マネジャー管理職の役割と、
役割を果たすために必要な行動をお伝えします。

前回の記事で、マネジャー管理職の役割は
他者を使ってチームで成果を出すこと
というお話をしました。

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その役割を果たすために何をすればいいか、
大きく5つの機能としてまとめました。

なお、機能しているかをはかるチェックポイントを記載しています。参考にしてみてください。

チェックポイント

1.方針/目標

まずはじめに、
マネジャー管理職がやるべき最も重要なこと。

方針と目標の浸透

会社の経営方針と、それを実現するためのチームや部署の目標を浸透、意識づけさせることです。

方針は、行動規範判断基準となります。
これを浸透させないと、個人がそれぞれの価値基準で、勝手な行動をしてしまいます。
また、何か問題が起こった時、何を重視して対応すべきか判断できません。

目標は、メンバーがこの実現に向けて仕事をする、というものです。
チームや部署の目標を共有し、内容によっては各個人に振り分け、メンバーの行動を目標達成に向けさせます。

「上はそう言うけど、おれはそうは思わない」と言っている人はいないか?

こんなセリフが漏れ聞こえたら要注意。
方針や目標が浸透していないサインです。
方針への理解、目標への意識がないメンバーは、足を引っ張る存在となります。

部下は目標をすぐに言えるか?

目標をすぐに言えない人が、意外と多いようです。
「何のために仕事をしているのか?」
「どこに向かって仕事をしているのか?」
これを理解していないと、限りある時間や労力を集中できず、求める成果が出てきません。

そして、そういう人に限って、評価への不平不満が多いものです。
「評価」とは、方針・目標の達成度です。
方針・目標を知らない人の何を評価すればいいのか・・・

なお、もしも評価基準と方針・目標が一致していなければ、早急に改善する必要があります。
みずから改善するか、人事部門や経営幹部に改善提案をしましょう。
これもマネジャー管理職の重要な仕事です。

2.戦略

マネジャー管理職がもつ2つ目の機能は、1.方針実現/目標達成のための戦略です。
以下を順番に行います。

①戦略の策定
②戦略の実行
③進捗管理

①戦略の策定

チームや部署が役割を果たし、目標を達成するための施策、行動を計画します。

置かれている状況、強み弱みを分析し、
何を優先すれば目標達成の可能性が高くなるか?成果を大きくできるか?を考えます。
・SWOT分析
・アイゼンハワーマトリクス(緊急-重要)

といったツールを活用すると、整理の手助けになります。

部下は、自分の仕事が「何の役に立っているか」「何に貢献しているか」を理解しているか?

これがわからないと
「何をどうがんばればいいかわからない」
「いくらがんばっても報われない」
となり、さまよえる無気力な集団と化してしまいます。

財務諸表(PL/BS)の勘定科目の意味と、日常の業務とのつながりを把握し、部下にも折に触れて伝えることをおすすめします。

②戦略の実行

次に、立てた戦略を伝え、確実に実行させます。
実行されて初めて 「伝えた」「浸透した」と言うことができます

部下が自分で行動を考えることができる余地はあるか

多くのマネジャー管理職は、部下に
「受け身ではなく自分から行動してほしい」と望んでいることでしょう。
なかなかそうならない、という悩みをお持ちの方、多いことでしょう。

いろいろな方法がうたわれていますが、私が重要と思うポイントは、
「部下が自分で行動を考えることができる余地を作る」ことです。

すべて指示をすると、それぞれの創意工夫が出てこなくなります。
逆に、ゼロから考えさせるのは、マネジャー管理職の役割放棄
特に、知識も経験もない部下は、途方に暮れるだけです。

自分で考え、決めることができることを知ると、人は前向きに取り組むようになります

それが、チームとして大きな成果を生み出す原動力になります。

③進捗管理

戦略が計画通り実行されているか、目標は達成できそうか、進捗を把握します。
目標達成があやしければ施策を追加し、問題があれば、原因を分析して改善策を講じます。

その際のチェックポイントを2つあげます。

進捗度を測る尺度はあるか?

進捗度を何で測るか?その尺度を事前に設定し、メンバーにも共有することが重要です。
それが
KPI -Key Performance Indicator-
(重要業績評価指標)
目標を達成するカギとなる重要な指標です。

指標なので、設定するのは測定可能なもの。
数字状態です。

運用のポイントは「早く 正確に 効果的に

早く
数字の算出や集計に時間をとるケースが多く見られますが、
大事なのは、数字を出すことではなく、数字を使って判断をすることです。
判断が遅くなれば、それだけ対応も遅くなります。少しでも早く出して、素早い対応につなげることが重要です。

正確に
誤った情報は、メンバーに違う努力をさせることになります。
単なる間違いは論外ですが、都合のいい解釈をすることも、誤った判断を招き、部下を失望させ信頼を失います。組織全体の問題にもつながります。
たとえ都合の悪い結果であっても、正確に共有しましょう。

効果的に
「①戦略策定」のチェックポイントでお伝えした
・自分の仕事が何の役に立つか?
・何に貢献するか?
がわかる指標を設定することで、最小限の労力で目標に向かうようになります。

進捗管理を部下の育成に活用しているか?

進捗管理は、部下の育成に絶好の機会です。
順調なときも、進捗が思わしくないときも、これを生きた素材として、経験学習の機会にすることができます。

これだけを扱った記事で具体的な方法をご紹介しますが、簡単に言うと
・起こった結果(事実)
・起こした行動
・改善できる点
以上を順に口に出して説明してもらいます。
これによって整理することができ、これからの行動が明確になります。

部下が成長すれば、戦略の進捗の後押しになります。ぜひ活用してみてください。

3.戦力化

これまで、マネジャー管理職の役割を果たすための機能として
1.方針/目標の浸透
2.実現に向けた戦略の実行
についてお伝えしてきました。

3つ目は、実行するために必要な人材を育成し、限られた人材を最大限活用することです。

ここで改めて指摘するまでもなく、
あらゆる業界で人材不足が発生し、また働く人の条件、価値観、人種などの多様化が進む中で、進化するITの活用も視野に入れた対策が必要です。

業種業態や、おかれている状況によって最適解が異なりますが、多くの職場において共通してポイントと言えるお話を2つとりあげます。

①部下育成の前にすべきこと
②時短・限定勤務への対応

①部下育成の前にすべきこと

「人を育てる」というのは、正解がなく、時間もかかる大変なことです。
取り組んだからといって、望む成果が出るとは限りません。
個々人がもつ能力の問題、採用の問題もあります。

そんな中で、マネジャー管理職が持つべき視点は、

各メンバーに対して、どれだけ時間と労力を使うべきか?

時間には限りがあります。マネジャー管理職の体はひとつです。
なので、全員に同じ時間と労力をかけ、同じレベルを求めるのではなく、相手に応じて、必要な関わりをする。

・細かくていねいに教える
・きっかけだけを与える
・最低限のことをしてもらえればよい

この見極め・選別によって、効果的に役割を果たすことを考える。
自身にとっても会社にとっても重要なことです。

②時短/限定勤務への対応の肝

子育てや介護、また本人の希望も含めて、時短や勤務日数など、限定的な働き方に対応できるようにすること。
これが、人材不足を解消し、能力ある人材を失うことなく、持てる戦力を最大化するために有効な手立てです。

本人が、安心して継続的に能力を発揮できると思える環境か?

いろいろなノウハウがありますが、これが、欠いてはならない最も重要なポイントです。
必要なのは、この3つ。

・まわりの理解
・情報共有
・規定の運用

まわりの理解
メンバーが不公平感をもち、非協力的にならないように、理解を促進する。
そのためには、
いつかはみんなお互いさま
とマネジャー管理職自身が心から思い、伝え続けることです。

情報共有
業務の状況や進捗、積み残し課題など、すべての情報を共有することが重要です。
ルール化しくみ化してしまいましょう。
限定的な働き方をする人のみならず、すべてのメンバーにとってもプラスになり、チーム全体の生産性が向上します。

規定の運用
就業規則等の規定整備も必要ですが、いかに実情に沿って運用するかの方が重要です。
もし今の規定が安心して継続的に働けるものになっていなければ、決めごとに盲従するのではなく、幹部や関係部署に相談、提案をしましょう。
これも、マネジャー管理職の役割です。

私の経験では、これらを整えることで、時短社員が高いパフォーマンスを発揮してくれるようになり、他の社員の仕事の仕方にもよい影響を与えます。

4.渉外

マネジャー管理職の役割を果たすための機能の4つ目は「渉外」。

言葉の意味は「外部と連絡・交渉すること」で、広報や営業的な内容も含まれます。

ここでは、

チーム/部署の外に対する広報や交渉、調整など、成果を出すために必要な外部との活動全般

と定義します。

チーム/部署の外、つまり
・社内の他部署
・経営幹部
・社外のパートナー
といった人たちに対して、

・チーム/部署の状況を知らせる(広報)
・協力を得る
・物事がスムーズに進むよう調整する
・協働して大きな成果を上げる
・企画の承認を得る
・追加予算を獲得する
といった活動を行います。

これによって、
自力では難しいことを実現させ、チーム/部署の成果を最大化させるのです。

一般的にあまり認識されていないように思われますが、重要な役割です。
渉外をうまくやることで、成果がより大きくなり、難しい問題解決も可能です。部下は仕事がやりやすくなります。

どれも必要な項目ですが、特に影響の大きいのは、この3つです。

①広報

自分たちのことを知ってもらうのは、人間関係と同じです。
置かれている状況、直面している課題、何をしたいか等、困っていることやがんばろうとしていることを知ってもらうことで、協力が得られやすくなります。

②協働

他部署と協力して動けば、より大きな成果になります。

特に、他部署の手助けをすると、いつか返ってきます。日常の業務がスムーズになったり、無理をきいてくれたり。これも個人の関係と同じですね。

逆に、いがみ合い敵対していれば、業務に支障が出て、出せる成果も出せなくなります。
上司どうしの仲が悪くて部下が迷惑する・・・よく聞く話ですね。

③交渉/提案

特に経営幹部に対する交渉や提案です。
予算を引き出したり、企画や実行の承認を得ることにより、できることが増え、出せる成果が大きくなります。
部下からの信頼も大きくなります。

逆に、ここが弱いと
うちの上司は頼りない・動いてくれない
と思われてしまいます。
これまでの上司に対して、そう思ったこと、ありませんか?

渉外は管理職の仕事、と認識しているか?

交渉スキルや提案力、関係構築力も必要ですが、まず何より大切なのは、これを認識することです。

5.リスク管理

最後にあげるマネジャー管理職の機能の5つ目は、リスク管理。

・CSR
・情報管理
・労務管理
など、いずれも会社の信頼事業の継続性に結びつく、自分たちの存在に関わる重要なものです。
やるべきことの数、重要性ともに増していて、効率的かつ正確に対応する必要があります。項目は多岐に渡り、内容も細かく、取り組むのは大変です。

しかし、リスク発生の防止は、同時に

・成果を出す可能性を高めること
・成果を阻害する要因を排除すること

につながります。

例:労務

いま世間を騒がせている残業問題や各種のハラスメントなどに対して、改善や発生を防止させることによって、様々な効果があります。

残業削減の取り組みは、業務の効率化を促進します。過剰な労働の削減で、働く人のパフォーマンスが向上します。従業員の定着率や採用を助けるのは、言うまでもありません。

ハラスメント防止は、理不尽な命令や要求がなくなり、業務に不要なノイズがカットされます。成果を出す/役割を発揮することに集中できるようになり、仕事がスムーズになります。

短絡的で表面的な取り組みは逆効果です。
「よいサービスを社会に提供し続けるために、必要なことをする」
という企業活動の原則に沿って取り組むことが肝です。

チーム/部署が成果を出すために

最後に、マネジャーの意味について。
「馬をならす」が語源の
manage
という単語には、こんな意味があります。

どうにかする うまくやる
何とかする やりくりする

チーム/部署が成果を出すために、
持てるものを活用して、やりくりする。
問題が発生すれば、解決する。どうにかする。

何とか乗り越えるには、
状況に応じた判断と行動が不可欠です。

その判断基準と、行動の選択
そして、行動するための準備として、
これまであげてきた5つの機能が参考になればと思います。

成果が出て、上からも下からも信頼され、大きなよろこびを得るーーー
一人でも多くの方が、マネジャー管理職の仕事を楽しむことができることを願っています。

なかなかうまくいかない、という方は、
▼こちらの相談室をご利用ください。

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小澤将司
小澤将司
職場改善サポーター
店長、業務改善コンサルタント、管理部長を経て独立。
業務を改善しながら人材を育成する支援を得意とし、現場に入り込んで悩みを引き出し、行動を後押しする親身なサポートが評価を得ている。

産業カウンセラー
都内私立高校 心理学講師


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