マネジャーのミカタ

マネジャーは、チームの仕事の満足を追う

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mozawa

マネジャーの最も大切な仕事は、メンバーが仕事をしやすい環境をつくることだと考えていましたが、マネジャー経験を通じて、それだけでは充分でないことに気づいた、というお話です。

アルバイトに教えてもらったマネジャーの楽しさ

私が20代の後半、小売店の店長になりたての頃のお話です。

スタッフ募集に、アルバイト未経験の高校1年生の女の子が応募して来ました。
感じのいい子だったのですが、ご家庭に門限があって所定のシフトに入ることができず、採用を見合わせました。

ところが数日後、その子がお店にやって来て、こう言ったのです。
「どうしてもここでバイトしたいので、親を説得して門限を伸ばしてもらいました。働かせてください!」と。

そのときの彼女の熱意と期待感に触発され、
仕事の楽しさを味わって、社会に出るのが楽しみになってもらいたい
と強く思うようになりました。

それには目標に向かって一緒にがんばるのが一番と思い、「また行きたい、と思えるお店にしよう」というビジョンを掲げて、それぞれの長所や得意なことが活かせる仕事を任せながら、力を合わせてお店づくりに取り組みました。
仕事を任せるほど、バイトたちはどんどん成長していき、それと共にお店もどんどんよくなって行きます。

私ががんばり過ぎて体調を崩してしまったときは、リーダー格の大学生と高校生ふたりが
店長の仕事、やらせてください
と申し出て来て、助けてくれました。
より責任感のある仕事を任せることによって、彼らはさらに成長し、私の指示なしでも協力してお店を回すようになりました。
私は体力的に楽になり、お店の運営に集中することができるようになりました。

そんな彼らの活躍のおかげで、たくさんのファンがつくお店になって、売上目標も大幅に上回り、一緒によろこび合うことができたのです。

このようにして私は、高校生・大学生のアルバイトたちに、人の成長に関わりながら目標を達成するよろこび、マネジャーという仕事の楽しさを体験させてもらいました。

※なおこのお話は、別の記事で詳しく紹介しています。

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パワハラ上司と干渉しない上司

人の成長や育成にもっと関わりたいと思った私は、コンサルタントに転身して、小売からサービス業まで様々な業種の現場で業務改善の指導をしながら、育成の腕を磨きました。

現場で指導を続ける中で、社員の育成や人事、風土改善などに興味を持ち、そのような仕事に携われる機会のある会社に入社しました。

そこで、上司からのパワハラに遭ったのです。それも人事をつかさどる人に。

私を自分の支配下に置こうとし、
お前のためだ」「お前はわかってない
と言いながら、言葉遣いから行動まですべてを自分のやり方に従うよう強制してきました。それも人前で、まわりに聞こえるように。
昼休みは、半ば拉致されて、毎日1時間フルに演説、説教、過去の武勇伝など、言葉のシャワー。
さらに、コンサルタント時代に私が業務改善を得意分野としていたことを知った他部署から、相談や協力依頼があったのですが、何と上司が断りを入れ、そればかりか他部署の人との接触や交流を監視・検閲するように・・・。

このような状態が続いて気が滅入っていたあるとき、知人から
眠れてる?それパワハラだよ
と言われました。
ハラスメントという言葉が今ほど話題には上がっていない、10年以上前の話です。言われるまで自覚はありませんでした。
私は自分の身を守るため、早々にその環境から避難しました。

そのあとに入った会社の上司は、細かいことは言わず、干渉もせず、仕事しやすくすることを第一に考えてくれる人でした。
パワハラ上司とは真逆です。
自然と「役に立てる」と思うことを自分から探して取り組むようになり、やりやすい環境でのびのびと仕事に打ち込むことができました。

個人の満足と仕事の満足

やがて、その上司の推薦もあって、人事、労務、総務、経理、法務などを扱う管理部門の部長になりました。

業績を向上させるために、営業部門をはじめ会社の活動をサポートするのが役割ですが、自分の業務優先で、あまり役割を果たしているとは言えない状態でした。
「業績は営業があげるもの」
「余計な仕事を増やしたくない」
「やりやすく」「とにかく効率優先」
そんな意識と行動が目につき、変わってもらう必要がありました。

ただ、そうなるには理由や事情があるのではないか、と考えた私は、一人ずつ面談をして、まずは話を聞いてみることにしました。すると
「他部署から何でも押し付けられる」
「苦労が報われない」
「やりがいがない」
「前の部長は分かってくれなかった」
といった不満がたくさん出てきたのです。

前述のパワハラ上司みたいにはなりたくない、前任の部長のように理解のない上司に見られたくない、という思いもあり、つらさに寄り添い、がんばりを認めて、「こうしろ」という指示は強く出さずに部下のやりやすさを優先しました。

でも、なかなか変わらない。
会社の業績アップに役立てていない。

それどころか、かえって他部署に不便を感じさせるような、自己都合の対応や仕事の仕方を助長してしまったのです。

もしかしたら、個人の欲求を満たすことを意識し過ぎて、仕事の成果をおろそかにしていたのではないか?

個人の欲求とは、
「やりやすくしたい」「認めて欲しい」
といった部下の欲求、そして
「理解ある、いい上司でいたい」
という自分自身の欲求です。

「成果を出す・役割を果たす」という、求められるものを満たすのが、給料をもらっている会社員の仕事。個人の欲求もあるけれど、仕事をまっとうして、求められるものを満たさないと。

個人の満足よりも
仕事の満足を追おう

そう考えるようになりました。

成果を出すための支援

それから私は、部署として成果を出し役割を果たすことにフォーカスし、部下に対して
「成果を出すための支援」
に注力することにしました。

出すべき成果を示す
必要な行動や学びを具体的にさせる
実践する機会をつくり、任せる
ペースメイクとフィードバックをする

私の意図を理解した部下は、課題を自ら設定、克服し、やがて成果を出し始めました。
まわりから感謝される機会が増え、役割の発揮に向けた行動を積極的にするようになっていきました。

一方で、言い訳ばかりで行動を改善しない、理解しようとしない部下もいました。

こういう人に対しては、言い訳を逃さず、自分も逃げずに、行動を改善するさまざまなアプローチを試みました。
「できない」のか「やる気がない」のか区別する、何があれば行動できるか具体的にする、期限を決める、評価をシビアに伝える、といった具合に。

それでもダメなら、時間には限りがあるので、担当変更などをしながら、少しでも役割に貢献できる機会をつくりました。

こうしていく中で部署は少しずつ変化していき、営業部門のサポートや管理システムの改善、働く環境の整備など、社員の活動を支える様々なことを実行するチームとなり、部署の役割を果たすようになっていったのです。

つらい時期もありました。
一部の部下があくまで自己中心的な姿勢を変えようとしなかったり、トラブルが発生して人事的な措置をとらざるを得なくなったことも。

そんなとき支えとなったのは、共感し一緒にがんばってくれた部下の成長、そして私と同様に「仕事の満足を追う」ということに気づいた営業部門のマネジャーの存在でした。
単なる傷のなめ合いじゃなく、成果を得るために必要な指摘、助言をする。その結果、お互いがよくなる。そんな、仕事の満足を追うことでできた関係です。

そのかいあって、翌年会社は過去最高益を達成しました。
それは大きなよろこびでした。
個人の満足よりも
仕事の満足を追う
その結果ついてきたよろこびです。

振り返ると、店長時代も同じだったのかもしれません。
バイトたちと一緒に取り組んだのは、
「いいお店をつくり、目標を達成する」
という仕事の満足に向けて。
その過程で個人の成長ややりがいを生み、
その結果よろこびを味わうことができた。

マネージャーは、
部下や自分の個人的な欲求に流されずに、
チームの仕事の満足を追う
そのために、メンバーが
成果を出せるように支援する

これが、マネジャーに最も大切なことかなと思います。

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ABOUT ME
小澤将司
小澤将司
職場改善サポーター
店長、業務改善コンサルタント、管理部長を経て独立。
業務を改善しながら人材を育成する支援を得意とし、現場に入り込んで悩みを引き出し、行動を後押しする親身なサポートが評価を得ている。

産業カウンセラー
都内私立高校 心理学講師


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