「使えない部下」にしたのはマネージャー/管理職かもしれない
部下を「使えない」
と思ったことはありませんか?
正直に告白すると、私はあります…。
また、そんな言葉を何度も耳にしてきました。
でも、「使えない部下」にしたのはマネジャー管理職自身かもしれない。
いや、実はそう言っている本人が、マネジャー管理職として「使えない」のかもしれない・・・
そんなお話です。
私自身の経験を含めた事例より気づいた、
部下を「使えない」と言う上司
3つの特徴をまとめてみました。
1.理解ある上司でいたい・嫌われたくない
部下を「使えない」と言う上司
ひとつ目の特徴は、
- 嫌われたくない いい人でいたい
- 部下に寄り添う、理解ある上司だと思われたい
という気持ちから、強く言えない。
厳しいことを言わない。
その結果、使えない部下にしてしまう、
または、使えないと思ってしまう、
というものです。
こんなケースをいくつか耳にしましたが、
ここでは、私自身の経験をご紹介します。
管理職になりたての頃のお話です。
異動も同時にしたこともあり、
「嫌われたくない」
「理解ある上司だと思われたい」
という気持ちがありました。
部下たちの不満、報われない気持ち、大変さに耳を傾け、寄り添うようにして
「指示」という言葉は使わず、注意は時折、なるべくやさしく
本人達がやりやすいように
というのを最優先にしていました。
しかし、何人かの部下の
すぐ手抜きをしたり、楽をしたがる
ミスをしても言い訳ばかりする
文句は言うが、自分からは動かない
という状態が続き、
なかなか改善せずに困っていました。
やがて私は、こう思うように。
こんなに気持ちを理解して、やりやすくしてやっているのに、なぜ?
もしかして、ただの使えない人?
そんな中、他部署の人が
「あいつはダメだ。使えない」
「自分勝手で役に立たない」
「みんなの足を引っ張っている」
と言っているのを聞いて、
ふと気づいたのです。
もしかして、自分がこの状態にしたんじゃないか?
言うべきことを言っていないから、部下に
「これでいいんだ」
と思われているんじゃないか?
部下は、与えられた仕事を、
ストレスなく効率よく終わらせたかった。
その行動が、まわりからは
楽したいだけのように見えたり、
誰かに負担や迷惑をかけた。
ところが本人は、
それに気づいていない。見えていない。
であれば、上司である私がそれを指摘し、
気づせかる必要があるのに、
「部下に寄り添う、理解ある上司でいたい」という、
自分本位の欲求を優先して、言うべきことを言わなかった。
その結果、部下が
「使えない」と思われるようになり、
自らも、部下を
「使えない」としてしまったのです。
2.やたら部下の自主性・成長機会を強調する
部下を「使えない」と言う上司の特徴
ふたつめは、
- 本人が気づくのを待っている。
- 自主性に任せるのが、私のやり方。
- 細かいことを言ってしまうと、部下の成長機会を奪うことになるから言わない。注意しない。
などと主張することです。
私が過去に在籍した会社に、このようなマネージャー/管理が何人かいました。
たとえば、ある営業部長のお話です。
数字が頭打ちで、売上が不足していました。挽回する手段がなく、窮しています。
部長は
「これだけ数字が足りない。
どうすればいいか、自分で対策を考えよ」
と発信するだけ。
困った部下たちは、今やっていることを見直し、手がかりをつかもうとしました。
でも、これまでの延長の域を出られず、
決定的な手を打てずにいました。
そんな状態を見て、部長はこう言いました。
あいつらは、小さな改善に走って、仕事をしている気になっている。
でも、細かいことを言ってしまうと、彼らの成長機会を奪うことになるから言わない。
私はこのやり方で、結果を出す部下を育ててきた。自分で考えないやつは成長しない。使えない
部下の仕事の姿勢を批判し、
「使えない」とこき下ろしたのです。
自分のスタイル、過去の成功
(それも定かではありませんが…)に固執し、
課題は放置。
部下も放置。
結局、部署も部下も成果を出せず。
その部長は、
やがて部下なし管理職になりました。
また、こんな人もいました。
コンテンツを制作する部署の部長です。
いいと思える商品をつくり、リリースをしたものの、本当にいい商品か検証し、改善していくことが必要です。
ユーザーからは様々な声があがっていて、部署のメンバーはその声を蓄積していますが、検証は遅々として進んでいません。
どうやって改善を進めたらいいか、見えていないようです。
私は、どうするつもりなのか訊いてみました。するとこう言いました。
本人たちが気づくのを待っている。自主性に任せるのが、私のやり方。
言うのは簡単だけど、それでは本人たちのためにならないから、言わない。
自分で何とかできるようにならないと、制作のプロとして使えない
改善が進まないために事業が発展しないのは困るので、再び訊ねました。
「いつまで待つんですか?」
「出てくるまで待ち続ける」
「ヒントやきっかけのようなものは提示しているんですか?」
「それでは誘導になるから、やってない」
まるで、言いたくないだけかのよう。
もしかしたら、実は彼も方法が見えていないのを悟られたくないだけじゃないか?
とさえ思えてしまいました。
その人は、程なく定年を迎え、
一度は再雇用となったものの、契約が延長されることはありませんでした。
「自分で考えろ・勉強しろ・調べろ」
ふたりは、口をそろえてこう言っていました。
でも、できる人は勝手にやっています。
上司はいりません。
部下が、
何からどう手をつけたらいいか分からない
手段を持っていない
視野が狭くなっているのかもしれない
混乱しているのかもしれない
そんなとき、
状況を好転させるきっかけをつくれるのが
上司です。
ひとつのきっかけで何かをつかみ、
成果につながるかもしれない。これが成長。
でも彼らは、やらなかった。
「本人のため」「成長のため」
と口では言いながら、
それにつながることをせず、ただ
「自分で考えろ」「使えない」
と突き放した。何もしなかった。
その結果、
部署は成果を出せず
部下は成果と成長の機会を失いました。
部長が立場を失ったのは当然です。
何もしないことをみずから選んだのですから。
3.無責任に、あきらめる
部下を「使えない」と言う上司の特徴
3つめは、
さじをなげる。切り捨てる。あきらめる。
そんな姿勢を表すセリフをあげていきます。
いずれも、よく耳にする言葉です。
「あいつは言ってもきかない」
と、すぐにさじを投げる。
こういう人は、ちょっと言っただけで、いろいろな方法を試さない。
部下が、言われた意図を理解しているか、確認しない。
本人の考えをきかない。
たとえば、言い分を聞いておいて矛盾を指摘する、などという労力はかけない。
「できないヤツはできない」
と、切り捨てる。
こういう人ほど、
説明が足りない。
指示があいまい。
なのに「できない」と断罪する。
なぜできないのか、
不足していることはないか、
確認しない。
「あいつはやる気がない」
やる気が最初からゼロの人はいません。
何かしらの動機があって、今の組織にエントリーしています。
そうなった原因は何か考えてみたか
部下に期待や求めるものを示したか
悩みや課題を抱えていないか訊いてみたか
「あいつのやる気」の前に、まず
「自分の行動」を振り返る必要があります。
できることはやってみたか?と。
たまにグチるくらいならまぁいいですが、
(私もときどき言っていました…)
そんな、やらない自分を棚に上げて
「採用が悪い」
「おれならあんなヤツ採らない」
と、人のせいにする。
与えられた条件の中で最善を尽くすのが仕事というもの。
そんなに都合よく優秀な人ばかり採用できるわけではありません。
前出の営業部長にそんな話をしたところ、
「いや別に、普通でいいんだよ。普通で」
と返ってきました・・・。
普通って何だ?
採用のせいにする。
ないものねだりをする。
最善を尽くさない。
他責なんですね。要は。
「言うこと言ったから責任は果たした」
チームが求められる成果を出すために、部下に変わってもらう必要があるのなら、伝えなければいけません。
それが役割であり、責任。
「言った」だけでは、
「責任を果たした」とは言えません。
部下が変わることで、初めて
「言った」「伝わった」
ということができます。
役割とは、チームで成果を出すこと。
責任とは、役割を果たすために最善を尽くすこと。
「言うこと言ったから…」という人は、
マネージャー管理職の役割を発揮するために最善を尽くそうとする姿勢が欠けている人です。
やるべきこと
以上あげてきた、
部下を「使えない」と言う上司3つの特徴。
まとめると、こうなります。
自分本位でやるべきことをやっていない
つまり
マネージャー管理職の役割を果たしていない
もっと言うと
部下を「使えない」と言っている本人が
マネジャー管理職として「使えない」人だった
もしそうなってしまったら
または、そうならないために
やるべきこと・・・
それは
「今のままでいいのか?」
と問いかけることです。
まずは自分に。
マネージャー管理職の役割である、
チームが成果を出せるようにするために
できることはないか?
まだやっていないこと、
試していないことはないか?
部下を責めたり切り捨てる前に
自分が、成果に向けた行動をとっているか
考えてみることです。
すると、
部下にも行動を変えてもらう働きかけをする必要が出てくると思います。
そこで、部下にも
「今のままでいいと思う?」
と問いかけます。
チームで成果を出すために
組織での役割に貢献するために
何が必要か?できることはないか?
考えてもらうのです。
行動や認識が変わらなければ、
いったん区切って、次の手を打ちます。
いつまでも際限なくやる必要はありません。時間には限りがあり、身体はひとつですから。
とにかく
今のままにしない
ということが重要です。
なお、ここでいう「次の手を打つ」には、上席や人事、他部署などに相談することも含んでいます。自分ではどうしようもないときは、誰かの助けを借りてでも解決することが、役割を果たすための責任ある行動です。
もしも、自分が「できない」と思われるのを嫌って相談しないのであれば、それは自分本位というもの。マネージャー管理職の役割放棄です。
ということで、安易に部下を「使えない」呼ばわりする前に、部下や自分に、
「今のままでいいのか?」
と問いかける。
そして、まだやっていないこと、試していないことをひとつずつ実践していきましょう。
“使えない” という言葉を使ってはいけない
最後に。
「使えない」
という言葉を連発してきましたが、
この言葉はパワハラ的な発想です。
パワハラとは
「立場を利用した攻撃」
まるで上から「使えない」と断罪し否定するのは、まさにパワハラ的。
マネジャー/管理職は、職制上の単なる役割・立場です。人を断罪したり否定していいわけではありません。
「使えない」という言葉を使うのはやめましょう。
「使えない」という言葉が頭に浮かんだら、
自分はパワハラをしてしまう危険がある
と自覚しましょう。
今はパワハラ行為をしていなくても、しないように気をつけていても、疲れていたりイラついたり、何かのきっかけで我を忘れ、衝動的にやってしまう恐れがあるからです。
そしてもし、うまくいかなくてイラついたり、あきらめたくなったり、つい「使えない」という言葉が頭をよぎったら・・・
まずは深呼吸をして気持ちを落ち着かせましょう。
▼詳しく知りたい方はこちらへ。
▼部下の対応に悩み、ついイラっとしてしまう方へ。